本当に封建時代の武士に「武士道」があったかどうか
自分は知らない。
(世の多くの反『武士道』論はそれを否定する)
ただ考えられるのは
当時模範的な道徳として文学や哲学や劇の中に「武士道」は存在していたということ。
そしてやはり「武士道」に反する人間は多数いたであろうということ。
そういう人物がいなければ
筆者がわざわざこのような著書を残そうと思わないのではないだろうか。
もうひとつ思うこと。
この本の中では「武士道」の中の諸要素を
漢文や欧米の文学や歴史と対比させて論じている。
そうしていく中で「武士道」の諸要素の中の普遍的なものを抽出しようとしている。
筆者の博学とその平明な態度に敬服する。
『武士道』という本を論じるときに問題にするならばやはり
筆者が「武士道」の存在を無批判に前提としている点であって
その点を検証することでしかこの書には対抗できない。
はっきり言ってこの本は強い。
感想になるけれど
この本を読みながら
今の自分の精神が失ってきたものにどうしても想いが及ぶ。
古典やら剣道やら能やらを学んできたけれど
それがいかに表面的なものかを思い知らされる。
それは古典に回帰せよとか
昔の武士道を身につけよとか
そういう復古的な考え方をしたいというわけではなく。
まだ読了していないし
内容をしっかりと吟味し尽くしたわけではない。
この本から学べることはすごく多いと思う。
世に言われるほど
この本はナショナリズム的なものではない。
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