ネタバレ注意。
ちょうど時間があったのでふらっと観に行ってきた。
評判がめちゃくちゃだったのであまり期待してなかったけれど
…。
特に原作を読んだ者にとってはつらい。
原作のもつ世界の広がりが容赦なく縮小されちゃってる。
横の広がり=空間としての世界が
ホートタウン近辺にすべて集められちゃってる。
ゲド戦記の魅力って
小さな船でどんどん地の果てまで旅をしていくあの不安感であり
それをご近所ですまされるととてもつまらない。
縦の広がり=この世とあの世も
いつの間にか削除されちゃって
すべてこの世での出来事にしてしまっている。
途中の夢の場面などはかなりいいできだったから
展開を期待したんだけれど…。
黄泉の国に踏み込んでいきそこで扉を封印することが最大のドラマなのに
安っぽいファンタジーみたいにボスキャラ倒しておしまいになってしまっている。
宮崎吾朗氏の脚本の力不足というほかないのかな…。
この映画を観て
皮肉ではあるけれど
新しい作品を作り出すことの難しさというものを改めて思い知った。
つまり
物語はもう世界に腐るほどあるわけで
ちょっと気を抜けば気づかないうちに
そこら辺に転がっている物語のパターンを踏襲してしまうことになる。
人質を助けるために本拠地に乗り込んで
崩れる城の中で窮地に陥るところを最後に大逆転
なんてパターンはもうどこにもあるわけで。
少年と少女が世界を救うなんて
それはもうラピュタで表現してしまっているわけで。
神話について深く研究しその型をうまく援用しながらも
新しい神話を作り出そうとする宮崎駿に比べ
宮崎吾朗は未だ既存の物語の枠の中から脱出できていない。
残念ながらゲド戦記の神話性はスポイルされてしまった。
ゲド戦記を本で読まないであの映画を観たうちの親父は
なんだかやたらコメントを述べていたけれど
それも映像についてのことが多かったなあ。
絵については確かに高いクオリティだけれど
時折ジブリらしからぬ不自然な動きが見える。
ただ
観たあとの感じは悪くなかった。
収穫としては
「生きることを怖がっているのは死ぬことを怖がらないのとおなじくらいだめなことだ」
というフレーズ。
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